SAP HANAを活用した基幹系システム

図に使用される表記の凡例
図に使用される表記の凡例

想定するシステム

「SAP HANAを活用した基幹系システム」の構成例について説明します。

「SAP HANAを活用した基幹系システム」とは、以下のような特徴を持つシステムを対象としています。
  • SAP ERPやSAP CRM等の業務アプリケーション用のデータベース基盤としてSAP HANAを利用する
 (例) SAP Business Suite powered by SAP HANA, SAP S/4 HANA
  • データ分析基盤としてSAP HANAを利用する
 (例) SAP BW Powered by SAP HANA, SAP BW/4 HANA

システム構成

システム構成パターン

本番環境(Production Environment)、品証環境(Quality Assurance Environment)、開発環境(Development Environment)の3ランドスケープで構成する想定です。
代表的な構成パターンは以下の2パターンです。
パターン1:HANAにベアメタルサーバー、SAP APサーバー等にハイパーバイザーを用いたホステッドプライベートクラウド構成
ホステッドプライベートクラウド構成
上の例では3ランドスケープで物理サーバーを共有する構成で記載しておりますが、本番環境と品証/開発環境の物理サーバーを分離する構成も可能です。
パターン2:HANAにベアメタルサーバー、SAP APサーバー等にパブリックなサーバーインスタンスを用いたハイブリッドクラウド構成
パブリッククラウド構成
それぞれのパターンには以下の特徴があります。
パターン1:ホステッドプライベートクラウド構成
  • サーバー専有型なため、ハイブリッドクラウド構成と比べ、高パフォーマンス、高セキュリティを実現可能
  • 任意のリソースサイズの仮想マシンを構成可能
  • クラウド基盤におけるハイパーバイザー層の一斉メンテナンスなどの影響を受けにくい
  • 既存の環境と同じハイパーバイザーを選択することで、スムーズなクラウドマイグレーションを実現可能
  • 仮想マシンがおよそ20台以上の中規模~大規模のシステムでコストメリットがある
パターン2:ハイブリッドクラウド構成
  • ハイパーバイザーの設計、構築、運用が不要
  • ホステッドプライベートクラウド構成と比べ、より迅速にサーバー環境構築が可能
  • サーバーインスタンスがおよそ20台までの小規模のシステムでコストメリットがある

なお、上図における、サーバーの区分を以下の通り定義します。
サーバー区分  
SAP HANAサーバー SAP HANA
SAP APサーバー SAP S/4HANA, SAP BW等
SAP 関連サーバー群 Solution Manager, SLT Server, SAP router
その他サーバー群 Monitoring Server, Job Management等

SAP HANAサーバーの構成

SAP HANAサーバーは、SAP HANA セットを利用し、お客さま専有のベアメタルサーバー、ファイルストレージプレミアム、および SAP HANA Deployed TDI with Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA を組み合わせて構成します。
  • ベアメタルサーバーメニューの詳細につきましては、こちら を参照ください。
  • ファイルストレージメニューの詳細につきましては、こちら を参照ください。
  • SAP HANAメニューの詳細につきましては、こちら を参照ください。
なお、SAP HANA Deployed TDI with Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA では、バックアップ領域はファイルストレージプレミアム上に構成されます。
別途ブロックストレージまたはサーバーインスタンスサービス等を用いたファイルサーバーを構築し、バックアップ領域をファイルストレージプレミアムの外部に再構成する事を推奨します。
  • ブロックストレージの詳細につきましては、こちら を参照ください。
  • サーバーインスタンスの詳細につきましては、こちら を参照ください。

注釈

各メニューのご利用方法については、各メニューのチュートリアルを参照ください。


SAP APサーバーの構成

SAP APサーバーは、下記の2パターンのいずれかで構成します。
  • ホステッドプライベートクラウドの場合 : ハイパーバイザーメニューの仮想マシンを利用
  • ハイブリッドクラウドの場合 : サーバーインスタンスメニューを利用

ハイパーバイザーメニューでは、vSphere ESXi、あるいはHyper-Vを利用し、仮想マシンを構成します。
  • ハイパーバイザーの詳細につきましては、こちら を参照ください。
サーバーインスタンスメニューでは、Red Hat Enterprise Linux for SAP Applicationsを利用し、サーバーインスタンスを構成します。
  • Red Hat Enterprise Linux for SAP Applicationsの詳細につきましては、こちら を参照ください。
  • サーバーインスタンスメニューの詳細につきましては、こちら を参照ください。

SAP関連サーバー群の構成

SAP関連サーバー群は、下記の2パターンのいずれかで構成します。
  • ホステッドプライベートクラウドの場合 : ハイパーバイザーメニューの仮想マシンを利用
  • ハイブリッドクラウドの場合 : サーバーインスタンスメニューを利用

ハイパーバイザーメニューでは、vSphere ESXi、あるいはHyper-Vを利用し、仮想マシンを構成します。
サーバーインスタンスメニューでは、各アプリケーションに適切なOSを選択し、サーバーインスタンスを構成します。
  • OSメニューの詳細につきましては、こちら を参照ください。

サイジング

Quick SizerによるSAPS値の算出

一般的にSAP APサーバー等のサイジングはSAP提供のQuick Sizer Tool(以下、「Quick Sizer」と記載します)を用いて実施します。
  • Quick Sizerは、SAP Business Suiteのサイジングを行うために設計されたWebベースのツールです。同時接続ユーザー数、データフットプリント等のお客さまの要件に基づき、必要なHW要件をメモリーサイズ・SAPS値として求めることができます。
  • Quick Sizerにて求められるサイジング結果は、アドオンプログラム・カスタマイズなどのオーバーヘッドを含まない値になります。
  • 実際のお客さまのシステム構成を鑑みてサーバーを選定ください。Quick Sizerの詳細につきましては、8.3.1 SAP社提供のドキュメントを参照ください。

SAP HANAサーバー向けベアメタルサーバーとストレージ容量の選定

ベアメタルサーバーの選定
SAP HANAサーバーのサイジングではSAPS値は、あくまで参考値として使用されます。
お客さまにてお見積りされた、システムに必要なDB容量を基本にメモリーサイズを確定し、対応するベアメタルサーバーメニューを選定します。
フレーバー 仮想CPU メモリー 参考SAPS値 (ERP6.0) 非Unicode 参考SAPS値 (ERP6.0) Unicode
General Purpose 2 E5-2670v3 2P/24C 256GB 74,900 59,900
General Purpose 3 E5-2699v3 2P/36C 512GB 106,300 85,000

ストレージ容量の選定
SAP HANAサーバー用のストレージは、ファイルストレージプレミアムとローカルストレージを利用します。
各ファイルシステムでのマウントポイント、対応するストレージメニュー、および推奨ストレージサイズは下表の通りです。
ファイルシステム マウントポイント ストレージメニュー 推奨ストレージサイズ 格納先
データボリューム /hana/data 400MB/s HANAサーバーのメモリーサイズ ×1 ファイルストレージプレミアム
ログボリューム /hana/log 250MB/s HANAサーバーのメモリーサイズ ×0.5 ファイルストレージプレミアム
インストレーションパス /hana/shared 100MB/s HANAサーバーのメモリーサイズ ×1 ファイルストレージプレミアム
システムインスタンス /usr/sap 50GB以上 ローカルディスク

注釈

SAP HANA Deployed TDI with RedHat Enterprise Linux for SAP HANA では、バックアップ領域は、SAP HANAデフォルトの/hana/shared配下に作成されますが、別途ブロックストレージ、またはサーバーインスタンスサービス等を用いたファイルサーバーを構築し、バックアップ領域をファイルストレージプレミアムの外部に再構成されることを推奨します。 バックアップ領域の容量はお客さまの想定されるバックアップ手法、世代を考慮しサイジングしてください。


SAP APサーバーおよびSAP関連サーバー群向けサーバーインスタンスリソースの確定

ハイパーバイザーを利用する場合
Quick Sizerの出力値を参考に、ハイパーバイザーのベアメタルサーバー上に構築する仮想マシンに割り当てるリソースサイズを確定します。代表的なパターンにおけるSAPS値は下表を参照ください。
フレーバー Pattern 仮想CPU メモリー 参考SAPS値 (ERP6.0) 非Unicode 参考SAPS値 (ERP6.0) Unicode
Virtual Servers on General Purpose 1 Pattern 1 1vCPU 4GB 1,800 1,500
  Pattern 2 2vCPU 8GB 3,800 3,100
  Pattern 3 4vCPU 16GB 7,600 6,100
Virtual Servers on General Purpose 2 Pattern 1 1vCPU 4GB 1,500 1,200
  Pattern 2 2vCPU 8GB 3,000 2,400
  Pattern 3 4vCPU 16GB 6,000 4,800
  Pattern 4 8vCPU 32GB 12,000 9,600
  Pattern 5 16vCPU 64GB 24,000 19,200
Virtual Servers on General Purpose 3 Pattern 1 1vCPU 4GB 1,300 1,100
  Pattern 2 2vCPU 8GB 2,800 2,300
  Pattern 3 4vCPU 16GB 5,600 4,500
  Pattern 4 8vCPU 32GB 11,300 9,100
  Pattern 5 16vCPU 64GB 22,600 18,100
  Pattern 6 32vCPU 128GB 45,300 36,300
サーバーインスタンス利用する場合
Quick Sizerの出力値を参考に、サーバーインスタンスのフレーバーを選定します。
フレーバー 参考SAPS値 (ERP6.0) 非Unicode 参考SAPS値 (ERP6.0) Unicode
1CPU-4GB 1,500 1,200
2CPU-8GB 3,000 2,400
4CPU-16GB 6,000 4,800
8CPU-32GB 12,000 9,600
16CPU-64GB 24,000 19,200

注釈

  • 上記SAPS値は、弊社の経験等をもとに作成された推測値であり、サイジングにあたっての参考としてご提示するものです。
  • 上記SAPS値は、アドオン・プログラムなどの負荷を含まない、机上での計算値になります。実際のお客さまシステムのパフォーマンスにつきましては、実データ、実カスタマイズ環境及びアドオン・プログラムを加味した実測によるベンチマーク試験を行ない、最適なシステム構成を確認することをお奨めいたします。

バックアップリストア構成

SAP HANAサーバーのシステムバックアップリストア

SAP HANAサーバーのシステムバックアップ構成

SAP HANAサーバーのシステム領域のバックアップについては、以下のような構成を想定しています。
サーバーインスタンスを利用してNFSサーバーを構築し、NFSサーバー上にSAP HANAサーバーのバックアップを取得します。
../_images/backup_system.png

SAP HANAサーバーのシステム領域のバックアップ手順例につきましては、 SAP HANAサーバーのシステムバックアップリストアガイド を参照ください。


SAP HANAサーバーのシステムリストア構成

SAP HANAサーバーのシステム領域のリストアについては、以下のような構成を想定しています。
NFSサーバーからバックアップファイルをSAP HANAサーバーにリストアします。
../_images/restore_system.png

SAP HANAサーバーのシステム領域のリストア手順例につきましては、SAP HANAサーバーのシステムバックアップリストアガイド を参照ください。


SAP HANAサーバーのデータ領域のバックアップリカバリ

SAP HANAサーバーのデータ領域のバックアップリカバリはSAP社提供のHANA studio等を利用して実施することが可能です。
データ領域のバックアップ、リカバリのシステム構成イメージは以下の通りです。
サーバーインスタンスを利用してNFSサーバーを構築し、NFSサーバー上にSAP HANAサーバーのデータ領域のバックアップを取得します。
リカバリ時は、NFSサーバー上に取得したバックアップデータからリカバリを行います。
../_images/backup_recovery.png

注釈

サーバーインスタンスで構築したNFSサーバーのI/O性能はベストエフォートとなります。I/O性能の確保が必要な場合は、ブロックストレージをご利用ください。


SAP HANAサーバーのHA構成

SAP HANAサーバーのHA構成は、SAP HANA System Replicationの機能を用いて構築することが可能です。
構成イメージは以下の通りです。
../_images/ha_system.png

SAP HANAサーバーのHA構成の構築手順例につきましては、SAP HANAサーバー HA構成設定ガイド を参照ください。


SAP HANAサーバーのスケールアップ

SAP HANAサーバー(General Purpose 2)はSAP HANAサーバー(General Purpose 3)にスケールアップすることが可能です。
../_images/scaleup-0.png

SAP HANAサーバーのスケールアップ手順例につきましては、SAP HANAサーバー スケールアップガイド を参照ください。


参考ドキュメント

本資料作成にあたり参照したドキュメント、およびお客さまが「SAP HANAを活用したSAPシステム」を構成するにあたり参考となるドキュメントを下記に示します。閲覧には、SAP社へのユーザー登録をお客さまで実施いただく必要があります。

SAP社提供ドキュメント


SAP Notes

SAP Notesは、こちら で検索可能です。
  • 28976 - Remote connection data sheet
  • 35010 - Service connections: Composite note/overview
  • 1122387 - Linux : 仮想化環境での SAP サポート
  • 1122388 - Linux : VMware vSphere 設定ガイドライン
  • 1400911 - Linux : SAP on Red Hat KVM - Kernel-based Virtual Machine
  • 1409608 - Windows での仮想化
  • 1492000 - 仮想環境に関する一般サポート内容
  • 1514966 - SAP HANA 1.0: SAP In-Memory Database のサイジング
  • 1580509 - Windows Server Editions supported by SAP
  • 1637145 - SAP BW on HANA: SAP HANA のサイジング
  • 1736976 - BW on HANA 用のサイジングのレポート
  • 1793345 - Sizing for SAP Suite on HANA
  • 1872170 - Suite on HANA sizing report
  • 2161991 - VMware vSphere 設定ガイドライン