クラスターアーキテクチャガイド

はじめに

本文書の目的、位置付け

  1. 本文書は、Smart Data Platform(以下、「SDPF」と記載します)をカスタマーポータルからご利用であり、Microsoft社が提供するHyper-V製品を活用したクラスタ環境構築経験のあるお客様を対象としております。
  2. 本章では提供するスクリプトにより構築されるクラスターのアーキテクチャについて解説します。

[3]クラスターアーキテクチャ解説

構成概要

構成図

構成図

コンポーネント

  1. ベアメタルサーバー
    1. Hyper-V クラスターのノードとなるサーバーです。
    2. Hyper-Vの役割とフェールオーバークラスター、MPIOの機能をインストールします。
    3. クラスターのノードとなるためには Active Directoryドメインのメンバーサーバーである必要があります。
  2. ネットワーク
    1. データプレーン (青線) とストレージプレーン(黄線)の二つのロジカルネットワークを使用します。
    2. データプレーンには複数のサブネットを作成し、仮想マシン及びクラスター管理の通信で使用します。
    3. ストレージプレーンは Hyper-V ホストとストレージを iSCSIで接続するために使用します。
  3. ストレージ
    1. Hyper-Vクラスターのすべてのノードで共有するボリュームを作成します。
    2. 共有ボリューム上に Hyper-V 仮想マシンのデータを配置します。
    3. 一つの共有ボリュームはクラスターのクォーラムとして使用します。
  4. サーバーインスタンス
    1. Hyper-V クラスターを構築するために必要な Active Directoryドメインコントローラーをインストールします。
    2. 冗長構成をとるために追加のドメインコントローラーをインストールすることができます。

ネットワークの構成

  1. サブネット
    1. Hyper-V クラスターを構築するために VLANで分割された以下のセグメントを用意します。
      1. 管理用 (Management)
        1. Hyper-V クラスターノードが ADや他のノードと通信するために使用します。
        2. 更新プログラムの適用、バックアップ、監視等の運用管理に関する通信はこのサブネットを使用します。
      2. クラスター通信用 (Cluster)
        1. クラスターハートビート通信と CSVリダイレクションの通信に使用します。
        2. CSVリダイレクションは複数クラスターノードから共有ボリュームへのアクセスを調整するための通信です。
      3. Live Migration 用 (LiveMigration)
        1. 仮想マシンが Live Migrationする際のデータ転送に使用します。
      4. 仮想マシン用 (Service)
        1. 仮想マシンの通信に使用します。
        2. Hyper-V ホストからは論理的に独立したサブネットです。
      5. Azure Site Recovery 複製用 (Replica)
        1. Azure Site Recovery を利用して Hyper-Vホスト上で稼働する仮想マシンのデータを Azureに複製する際に利用するネットワークです。
        2. Azure に接続するためにインターネットへ接続します。
      6. Storage 用 (Storage)
        1. Hyper-V ホストとストレージを iSCSIで接続するためのネットワークです。
      7. Common Access 用 (Common Access)
        1. SDPFからベアメタルサーバーや仮想マシンのライセンス管理等を行うために利用します。
    2. サービス用サブネットの追加
      1. 仮想マシンが利用するサブネットを追加したい場合、データプレーンのロジカルネットワークにサブネットを追加します。
      2. Hyper-V ホスト上に追加の設定は不要です。
      3. 仮想マシンを目的のサブネットに接続するためには、仮想マシンのネットワークアダプターのVLAN ID に追加したサブネットの VLAN ID を指定します。

ストレージの構成

  1. ボリューム
    1. 仮想マシンデータ配置用ボリューム
      1. 仮想マシンのデータを配置するボリュームを用意します。
    2. クォーラム用ボリューム
      1. 100 GB のボリュームを作成します。
  2. アクセス
    1. すべての Hyper-V ホストの iSCSIイニシエーターからアクセスできるように、ボリュームのアクセス制御を構成します。

ベアメタルサーバーの構成

  1. ネットワーク
    1. 4つの物理ネットワークアダプターのうち、2つのアダプターを多目的、2つのアダプターをストレージ用として利用します。
    2. 多目的用ネットワーク
      1. 多目的で利用するアダプターは Windows Server標準機能でチーミングを行い、チーミングされたアダプターを仮想スイッチのアップリンクポートとして利用します。
      2. クラスター管理に必要な仮想ネットワークアダプターを Hyper-Vホスト OS 向けに作成します。
    3. ストレージ用ネットワーク
      1. ストレージが利用するアダプターは Windows Server標準機能でチーミングを行い、チーミングされたアダプターを仮想スイッチのアップリンクポートとして利用します。
      2. ストレージに接続するために必要な仮想ネットワークアダプターをHyper-V ホスト OS 向けに作成します
    4. 帯域
      1. 各サブネットの通信は VLANにより独立していますが、帯域の観点では共通の物理ネットワークを共有しているため、ある種別の通信が他の通信の帯域を圧迫する可能性があります。
      2. 同じ仮想スイッチ (物理ネットワークアダプター)を共有する仮想ネットワークアダプターに対して、最低限保証される帯域の割合を指定します。スクリプトでは既定値として以下の重みづけを行っています。
サブネット 重み
管理用 10
クラスター用 10
Live Migration 用 40
Azure Site Recovery 用 10
Common Access 用 10
仮想マシン用 ※各アダプターに対しての重み 3
  1. ストレージ
    1. ストレージ
      1. iSCSI イニシエーターを使用してストレージへ接続します。
      2. MPIO のラウンドロビンを使用して冗長化します。
    2. ボリューム
      1. ボリュームを NTFS 、アロケーションユニットサイズ 64KBでフォーマットします。
      2. 仮想マシンを配置するボリュームは CSV (クラスター共有ボリューム)として利用します。

クラスターの設定

  1. 仮想マシンのフェールオーバー設定
    1. スクリプトで作成される仮想マシンのフェールオーバー設定は既定値です。
    2. フェールオーバー先のホストやフェールオーバーの優先度、フェールバックの設定はフェールオーバークラスターマネージャーを使用して、各仮想マシン単位で行います。
  2. 仮想マシンの構成変更
    1. 仮想マシンの構成変更を GUI で行う場合は、Hyper-Vマネージャーではなくフェールオーバークラスターマネージャーから行う必要があります。
    2. フェールオーバークラスターマネージャーの「ロール」ノードを選択すると、中央に仮想マシンの一覧が表示されます。
    3. 仮想マシンを右クリックし「設定」を選択することで Hyper-Vマネージャーと同様の設定変更を行えます。